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社内報は“普通の人”が主役。会社に風を送っていきたい(日本ガイシ株式会社)

 トップメッセージから社員の身近な話題まで、硬軟織り交ぜたバラエティー豊かな企画をバランス良く展開する日本ガイシグループ報『MiZUHO』。昨今、紙の社内報は季刊や隔月刊の発行スタイルが増えていく中、月刊誌にこだわり、かつ社員に支持される好企画を出し続ける『MiZUHO』編集部を訪ね、その舞台裏に迫ってみました。

左からマネジャー 中曽根修さん、野呂奈保さん、グループマネジャー 松尾顕太さん
▲左からマネジャー 中曽根修さん、野呂奈保さん、グループマネジャー 松尾顕太さん

 2016年に社内報からグループ報になった『MiZUHO』。表紙には「TEAM AS ONE」のスローガンを掲げ、毎月8,000部を発行しています。インナーコミュニケーションの媒体は、この他にイントラネットと動画を併用。速報性のあるイントラネット社内報があるにもかかわらず、月刊で冊子を発行し続ける理由について、社内報担当歴5年の野呂さんは「生産現場をかかえる当社では、イントラを常時見られる人は限られます。『MiZUHO』で会社動向を知る人も多く、ニュースの鮮度を落とさないためには月刊でなくては。それが社内報担当者の使命です」と目を輝かせます。

日本ガイシ本社
▲日本ガイシ本社

企画のスタートは「ケンタクロース」からの贈り物

 『MiZUHO』の編集部隊は、編集長の松尾さんを中心に4人体制。編集の肝となる企画を全員出し、編集長のチェックが入ります。チェックのポイントは、経営課題との結びつきやストーリー展開などがきちんと考えられているかどうか。

 実際の流れは、ちょっと変わっています。毎年クリスマスイブに、「ケンタクロース」こと松尾顕太編集長から企画出しを促すメールがメンバーに届きます。ケンタクロースさんからの贈り物は企画出しの宿題で、「経営課題10個と社内報特集企画5個以上を出すように!」 というもの。締め切りは1カ月後になっています。

 なぜ、企画の前に経営課題を書き出すかといえば、「社内報担当者には、経営課題を認識することが必要不可欠。どんな企画も、経営課題にひもづくのです。例えば、一見経営課題とは無関係に思える〈クラブ活動の紹介企画〉も、背景には会社組織の事業部制があります。それは事業部制の導入により〈組織の縦割り〉という課題があったから。社員が他部門の社員と横のつながりをもつことで、会社内のネットワークが強められる。それは社内を活性化させることと同時に、社内報編集部は各クラブのメンバーと信頼関係を築くことにもつながります。この企画をきっかけに、クラブ活動内容の投稿を増やしていきたかったんです」と、松尾編集長が企画のねらいと背景について語ってくださいました。

「単に良い社内報を作ることが目的になってはいけません。作る過程やその先に共感を生むような社内広報をめざしたい」と松尾さん
「単に良い社内報を作ることが目的になってはいけません。作る過程やその先に共感を生むような社内広報をめざしたい」と松尾さん

『MiZUHO』2016年6月号の表紙「特集 日本ガイシのクラブ活動を一挙に紹介!」の誌面1「特集 日本ガイシのクラブ活動を一挙に紹介!」の誌面2

▲2016年6月号の表紙と「特集 日本ガイシのクラブ活動を一挙に紹介!」の誌面

ネットワークをテーマに途中入社社員の紹介も

 201710月の途中入社社員の紹介企画も、“会社の今”を映し出したもの。途中入社社員が徐々に増え、その数が新卒採用者を上回ってきた状況で、「ぜひスポットを当てたい」と着目したのは、広報に異動して1年の中曽根さん。

「読者の反応が嬉しいです。これからもたくさんの人にでてもらいたい」と中曽根さん
「読者の反応が嬉しいです。これからもたくさんの人にでてもらいたい」と中曽根さん

 「この企画も、企画出しの段階では、ダメ出しが来ました」と苦笑いを浮かべます。「途中入社社員が増え、彼らの現職場以外のネットワークについて紹介したいと思ったのですが、編集長からは『これではストーリー展開ができてない。最初に全体の話があって、その上で個々の話に入っていかないと、読者には伝わらない』と言われ、改案しました」。このように企画内容に妥協をせず、編集長とメンバーの間で企画を揉むことで企画に厚みや深みが出ていきます。その結果、読者に響く企画が生み出され、育てられるのでしょう。また、『MiZUHO』ではこのようにストーリー展開にこだわると同時に、もう一つ守らなければいけない編集手法があるといいます。

『MiZUHO』2017年10月号の表紙「特集 途中入社社員もっともっとネットワーク」の誌面1「特集 途中入社社員もっともっとネットワーク」の誌面2

▲2017年10月号の表紙と「特集 途中入社社員もっともっとネットワーク」の誌面

「リードを先に」は、編集の鉄則

 特集企画の編集手順として、本文の原稿作成を行う前に特集のタイトルを決めることは珍しくありませんが、『MiZUHO』ではタイトルのみならず、リードも先に書き上げることが鉄則です。なぜならリードをしっかり書き上げることで企画の方向性が決まり、ブレない企画になるから。

 「編集を進めていくと、いろいろなアイデアが浮かんできますよね。そのこと自体は悪くないのですが、安易に新しいアイデアに飛びついてしまうと、企画としての一貫性がなくなり、論理展開から外れてしまうことにもなりかねません。リードを先に書くことで、企画がブレなくなるのです」と松尾編集長は柔らかな口調で、しかし編集者としての大事な心得を教えてくれます。その教育を徹底的に受けた野呂さんも「取材に行く前に、企画の最終イメージができているので取材もしやすいですよ」と、“リードファースト”の編集要領をしっかり身に付けているようです。

基本はコツコツ。足でかせぐ!

 月刊誌の編集は息つくヒマがありません。どれほど多忙を極めても社内報の質を落とさず、安定感のある誌面を作る『MiZUHO』編集部の秘訣を探ってみると、そこには「コツコツ」がありました。

 前述のクラブ活動紹介企画も、『MiZUHO』としては初めて取り組んだ企画。テーマ自体の難易度は高くないものの、全30のクラブ・同好会の情報をまんべんなく集め、編集するには根気がいります。たとえ誌面上ではシンプルに見えたとしても、実際には担当者が34カ月の時間をかけて地道に着々と準備をした、“努力の企画”なのです。

「ニュース鮮度を落とさず、月刊で情報を届けることが使命です」と野呂さん
「ニュース鮮度を落とさず、月刊で情報を届けることが使命です」と野呂さん

 もう一つ、201711月号「全員の安全意識と感度を上げて災害ゼロへ」の特集も「コツコツ」の集大成企画です。日本ガイシの「安全対策」は2012年からニュース記事やミニ特集で取り上げてきましたが、それを特集企画としてさらに大きく打ち出しました。部門や各拠点の担当者とは、それまで築いてきたつながりがあったおかげで「スムーズに取材ができました」と野呂さん。いつものように、先に書き上げたリードに沿って取材をし、中身を埋めていく編集業務は、イメージ通りだったそうです。この企画を紹介してくれた野呂さんの瞳の奥には、数年来追いかけてきたテーマを企画化した達成感もうかがえました。

『MiZUHO』2017年11月号の表紙 「特集 全員の安全意識と感度を上げて災害ゼロへ」の誌面1  「特集 全員の安全意識と感度を上げて災害ゼロへ」の誌面2

▲2017年11月号の表紙と「特集 全員の安全意識と感度を上げて災害ゼロへ」の誌面

社内報づくりはゴールではない

 月刊発行の業務量は並々ならぬものですが、社内報について語る3人は終始笑顔です。そんな3人にこれからの抱負を伺ってみると「第一にたくさんの人に登場してもらう社内報でありたい。繰り返しになりますが、『MiZUHO』は、特別な人を取り上げるのではなく、普通の人を主役にする社内報。その人たちの長所を見つけて紹介し、その人たちのモチベーションを上げていく手伝いをしていきたい。これからもグループ1万4千人に会いに行きます」と中曽根さんと野呂さん。

 そんな2人の抱負を受けて、松尾編集長は「良い社内報を作ることは重要だけど、作って終わりではありません。人材活性化は永遠のテーマで、自分たちが出過ぎてもいけないけれど、社内を動かしていく、新しい動きをサポートしていく、問題を投げかけていく。あえて社内にちょっと波紋を起こすくらいのことをしていきたい」と語ります。グループ報『MiZUHO』のチャレンジと進化に、これからも期待が膨らみます。

グループ報『MiZUHO』概要

◆創刊:1951年

◆発行部数:約8,000

◆仕様:A4判、4色、20ページ

◆発行頻度:月刊

社内報とインナーコミュニケーションについて語る3人は終始笑顔
▲社内報とインナーコミュニケーションについて語る3人は終始笑顔

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