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経営に聞く「企業のライフイベント活用の効果とは?」

最近「おかげさまで○○周年!」と謳った広告やCMを頻繁に見かけるようになりました。日本の企業は長く存続し、周年を迎える企業が目立ってきています。株式会社光通信も2017年に30周年を迎えます。上席執行役員の石綿純さんに、ウィズワークス株式会社の浪木克文が、経営から見た企業のライフイベントの効果についてうかがいました。

株式会社光通信人事本部 上席執行役員 本部長 石綿 純さん、ウィズワークス株式会社 代表取締役社長 浪木克文
左:株式会社光通信人事本部 上席執行役員 本部長 石綿 純さん
右:ウィズワークス株式会社 代表取締役社長 浪木克文

過去の失敗を振り返り、未来の発展につなげる

浪木 御社は20172月に30周年を迎えられますが、何か記念事業やイベントを行うご予定はありますか?

石綿 特にイベントのようなものは考えていないのですが、創業からこれまでの総括はやろうとしています。

浪木 それはどのような内容でしょうか?

石綿 歴史を振り返ってまとめる計画があります。

浪木 社史ということですか?

石綿 いえ、そうではないですね。体裁も簡易にするつもりですし。歴史全般を振り返るというよりは、これまで我々がしてきた数々の失敗について掘り下げようと思っています。

浪木 具体的にはどのように?

石綿 これまでいくつかのターニングポイントがありました。そこで我々がどんな意思決定をして失敗に至ったのか、その時に起きたことや判断の過程も含め、徹底的に掘り下げて検証したいと思っています。当社はM&Aで成長してきた会社なので、主にM&Aに関することになると思います。

浪木 失敗を掘り下げたいという理由は何でしょうか?

石綿 一言で言えば、失敗から学ぶことでしか次の成功につながらないと思うからです。なぜ負けたのか、あるいは負けないようにするためにはどうしたらいいかを考えることは、なぜ勝ってきたかを分析するよりずっと大事なことで、その方がより強い会社になれると思うのです。

30周年を「きっかけ」に温めていた構想を実行

浪木 30周年のタイミングで振り返りを行う意味は何でしょうか?

石綿 どこかできちんと振り返りをして社員に歴史を伝えていく必要があるのでは、という意見は、実はずっと以前からありました。というのも、当社は中途入社者が多い会社のため、創業者の会長と社長を除くと、この30年の変遷を見てきた人間があまりいません。今いる社員の半数以上が、ここ10年以内の入社なんです。

浪木 歴史を知り、継承する人間がいないんですね。

石綿 そうです。で、その何が問題かというと、彼らは失敗の歴史を知らないのです。それはここ10数年、2ケタ成長が続き、好調な時しか知らないからです。ところが、それ以前となると、悪評が立ったこともありましたし、苦い思いをしたこともありました。その時代のことをなんとなくは知っているけれど、詳しくは知らないために何かモヤモヤ感のようなものを抱えている、という話をちょくちょく耳にします。いつかそのモヤモヤを解消できたら、という思いがありました。そこで、30年という節目が来るならこれに絡めてやってしまおうと。いいことも悪いことも全部社員に開示して、理解してもらい、それでまたがんばろうって思ってくれるならいい機会だからやりましょう、となったわけです。

浪木 30年が「きっかけ」になったということですね。

石綿 その通りです。あくまで「きっかけ」であり、30年だから、というのではないですね。

石綿 純さん
Profile:石綿 純 1992年リクルート(現リクルートホールディングス)入社。リクルートマーケティングパートナーズ、スタッフサービスホールディングスを経て、20157月より、(株)光通信現職

若手起業家の育成強化でDNAと強みを継承

浪木 周年を契機として、他には何か考えられていますか?

石綿 2つあります。1つは、幹部を集めて合宿をやり、過去の失敗から自分たちは今後どうしていくべきかを考察する時間を持つこと。これは社長が望んでいることですが、振り返りの発展型のようなものですね。もう1つは、当社から独立して我々の事業に協力してくださっているOBやパートナーがたくさんいらっしゃるのですが、そういう方々にきちんと感謝の気持ちを伝え、「これからもお互い成長して行こう」という場を作ることを考えています。これらが柱で、それ以外は何もやらなくてもいいかな、ぐらいに思っています。

浪木 周年事業は企業によって100100様で、最近ではインナーブランディングを目的に実施する傾向があります。なぜかというと、それまで前を向いて挑戦していたのが、ある程度時が経つと自立の強みが薄れてしまう。社員のベクトルがばらつくため、あらためて自社のDNAの共有やビジョンの共有が必要になるからです。御社にはそういう懸念はありませんか?

石綿 ありますね。うちでいえば、独立への意識が薄れているように思います。実はここが当社の強みだったのですが……。

浪木 それはどういう理由からだと思われますか?

石綿 これもやはり「知らない」からだと思うんです。当社は創業時から独立起業を応援する社風で、独立する際はうちの商材を扱う代理店になります。退職金代わりに支援金を出すなど会社からのバックアップがあるのですが、その内容が社内に伝わっていないんです。「若い力を信じる」というキャッチフレーズもあるんですが、現場にいると「本当にそう?」と思う場面も多いみたいで。

浪木 そうなんですか。

石綿 ですから再度、社内に向けて独立支援の広報を行う予定です。月1回、社内の独立希望者に向けて研修(研修名:独立ラウンジ)をしていて、そこも絡めて伝えていければいいなと。これには社外対象のコースもあって、ゆくゆくはもっときちんとした学校に進化させたいと思っているんです。そのように若い起業家を応援し、生み出していくことを当社のウリにしていきたいですね。

一過性では終わらせない、浸透を図る秘訣とは

浪木 御社自体が、若い起業家によってできた会社ですからね。そうしたプロジェクトを進めていく際に、気をつけていることはありますか?

石綿 形だけで終わらないように、経営層から社員まで浸透させる、ということですね。ですから、今回の周年でやることも3つに絞っています。認知させながらだと、そうたくさんのことはできないですからね。

浪木 伺っていると、一過性のものではなく、それをすること自体が将来、企業価値を向上させる活動のように感じます。

石綿 まさしく、その通りです。企業価値につながらないことはやらない会社なんです(笑)。

浪木 浸透を図るに当たって、注意されていることは?

石綿 とにかくシンプルに伝えることが極めて重要だと思っています。誰が聞いても「こういうことを言っているんだ」と分かるぐらいのシンプルさで伝えることが肝心で、そこにはとても気を遣っているつもりです。特にうちのように大人数がいろいろな立場で働いている会社では、その点が非常に大事になってきます。曖昧だとさまざまな捉え方をする人が出てくるので。

浪木克文
Profile:浪木克文 1990年リクルート入社。社内イベント・総務コンサル会社、イベント・組織コンサルティング会社を経て、20167月ウィズワークス(株)現職

唯一の伝達ツールも有効な活用法を模索

浪木 1つの解釈しかできないぐらいの言葉にまで研ぎ澄ましていくということですね。ところで、普段、社内の情報発信はどうされていますか?

石綿 「Bネット」というポータルサイトを利用しています。

浪木 トップメッセージもそこに掲載されるのですか?

石綿 はい。当社には社内報のようなツールがありませんので、「Bネット」に30周年を迎えての会長や社長のメッセージも掲載する予定でいます。

浪木 30周年は過去を起点に未来を考えていく「きっかけ」にしていきたいということでしたが、社員レベルでも自分ごととして浸透させていくのに、「Bネット」を使って何かやろうというお考えはないですか?

石綿 ああ、それはいいですね。とにかくもっと活用できるように模索したいと思います。ただ、遠心力と求心力の会社があるとすると、うちはこれからは圧倒的に遠心力の会社。我々を中心に各グループ会社や代理店様が成長するモデルを目指しています。30周年をきっかけに、企業価値をもっと向上させる仕掛けを、グループALLで考えていきたいですね。

 

企業概要

株式会社光通信
設立:1988年
本社:東京都豊島区西池袋1-4-10 光ウエストゲートビル
URL:http://hikari.co.jp/

 

※『コミサポプラス』2016年10月号より転載

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